フランスおすすめシャンソンその①
シャンソン (une chanson)とは、フランス語で歌のことを指します。日本語でシャンソンと言うと、「フランス語の歌謡曲」という感じでしょうか。定義は色々とあると思いますが、ここでは「ちょっと古めのフランス語の曲」というぼやかして、個人的におすすめの曲を紹介したいと思います。
最新の曲を探されている方、ごめんなさい。でも、きっと何か発見があると思うので、見ていっていただけると幸いです。
今回は8名、アルファベット順で紹介しますね。
- 1.Claude François クロード・フランソワ (1939-1978)
- 2.Christophe クリストフ (1945-2020)
- 3.France Gall フランス・ギャル (1947-2018)
- 4.Georges Brassens ジョルジュ・ブラッサンス (1921-1981)
- 5.Jean Ferrat ジョン・フェラ (1930-2010)
- 6.Julien Clerc ジュリアン・クレール (1947-)
- 7.Nino Ferrer ニノ・フェレ (1934-1998)
- 8.Serge Reggiani セルジュ・レジアニ (1922-2004)
1.Claude François クロード・フランソワ (1939-1978)
クロクロの愛称を持つクロード・フランソワ。時代もあってか、ちょっと大げさな曲とナルシスティックなキャラクターが目立ちますが、一度聴いたらなかなか忘れられない曲を作り続けたことはすごいことですね。たくさん曲がある中で選ぶのはなかなか難しいですが、選曲してみました。
Belles, belles, belles :
1962年の曲で、つい体が動いてしまいそうな曲調が好きです。
フランス語の曲を和訳されている朝倉ノニーさんのサイトで和訳の歌詞が見られます。
朝倉ノニーの<歌物語> | ベル!ベル!ベル!Belles! Belles! Belles!
Le lundi au solei :
こちらも朝倉さんのサイトを貼らせていただきます。
朝倉ノニーの<歌物語> | 陽のあたる月曜日Le lundi au soleil
あえてこの曲を選んだ理由の一つに、サエキけんぞうさんという歌手が日本語でカバーをされていて、その曲が頭から離れなかったためです。このなんともいえない脱力感と、皮肉感もあるアレンジが素敵です。
才能に恵まれた人生でしたが、クロクロは39歳の若さで1978年に浴室で感電死してしまいます。
フランスは電圧が230V(当時は220V)と高く、100Vの日本に比べて感電した時の危険が大きいようです。ウォッシュレットが日本で普及しやすいのは電圧が高すぎないからじゃないからかと思います。
2.Christophe クリストフ (1945-2020)
Aline : フランス語のメロディーへの乗り方が綺麗で、すごくシャンソンらしいなと思います。(フランスの女性の名前である)アリーヌ!と叫ぶように歌うドラマティックな曲です。
和訳を載せてくださっている方のサイトはこちら。
3.France Gall フランス・ギャル (1947-2018)
フランス・ギャルはどうしてもアイドル歌手のイメージがあって、当時の曲について、本人の意図と違っていた部分もあるのかなと感じさせられるところがあり、紹介すべきか迷うところではありますが、そういったエピソードも含めて語られるべきことなのかも、と思いました。
Les sucettes(アニーとボンボン):
セルジュ・ゲンズブール作のヒット曲としては、「夢見るシャンソン人形」が有名ですが、翌年に発表されたこの曲は歌詞がスキャンダラスだとして当時も話題になったようです。
フランス・ギャルの声は、パーンと弾けるような高音を出す曲だけでなく、こういう風に優しく歌う曲にも合いますね。
和訳と解説は宇藤カザンさんのサイトをご紹介させていただきます。
2015年のインタビューでは、当時ゲンズブールに「バカンスの間、何したの?」と聞かれて、フランス・ギャルは「実家で過ごしましたが、あまりすることがなくて、毎日アニスのギャンディーを買いに行ってました」というエピソードを話したところ、この曲が出来てきたとのことです。初めて曲を聞いた時、とても好きになったそうですが、歌詞に二重の意味があるとは知らず、知らされた時に恥をかかされて、それ以降男性との関係性が変わってしまったと語っています。
Polichinelle : 淡々と歌い上げる曲なんですが、こういう歌唱も個性になっているなと感じます。
和訳はこちらも宇藤さんのサイトを。
Computer Nr3 : これはドイツ語で歌われている曲なのでおまけとして。ベルリンでのパフォーマンスの映像ですが、観客の神妙な顔つきが気になるところです(冷戦時の空気感でしょうか)。
4.Georges Brassens ジョルジュ・ブラッサンス (1921-1981)
ブラッサンスの曲は、繰り返しの多いメロディーにのせて歌われるので、耳に残りやすいです。ちょっとタブーになりそうなことでも詩にしていて、解説がないとなかなか理解できないこともあります。197曲もの和訳と解説をされているサイトがあるので、ぜひ曲を聴くときにはこちらも参考にしてくださいね。
https://www1.gifu-u.ac.jp/~frjp/bases/brassensjp/octi/index.htm
個人的に好きな曲をいくつか挙げますね。
Les copains d'abord(仲間を先に):友情をテーマにした曲。ふざけたり、からかい合っていたりするし、口喧嘩もたまにするけど、いざというときには助けるし、いなくなったら寂しい。なんかすごくフランスのおっちゃんたちの間で見られる光景のように思います。
うまく再現されているかは別として(汗)、映画プチ・ニコラの3作目でもカバーされたようですね。
和訳・解説は先のサイトの85番をご覧ください。
https://www1.gifu-u.ac.jp/~frjp/bases/brassensjp/octi/sub11.htm
Les trompettes de la renomée (噂のラッパ吹きども):
解説を載せられているdabiel-bさんのブログによると、噂をスクープにしたがる記者に対する皮肉の曲です。
ジョルジュ・ブラッサンス「les trompettes de la Renommee」 | フランス専門さん(daniel-b)のなんでもブログ
ブラッサンスはフランス南部のSète (セート)という街で生まれ、Sèteには博物館 (Espace Georges Brassens)や彼の墓があります。ぜひ南仏に行かれる際は、目的地の一つに入れていただきたいところです。
Espace Georges Brassens Sète, un musée autour de Georges Brassens
5.Jean Ferrat ジョン・フェラ (1930-2010)
La montagne :
曲の解釈を記事にされている方がいらっしゃったので、紹介させていただきます。
ジャン・フェラのシャンソン「ふるさとの山」に見る日仏文化の違い - エスカルゴの国から
ジョン・フェラは労働者階級への賛辞を歌にし、後年は政治の世界にも参加しました。
6.Julien Clerc ジュリアン・クレール (1947-)
Ma préférence : ラジオなどで流れるとふと手を止めて聴き入ってしまう、そんな曲です。
歌詞、和訳はまたまた朝倉さんのサイトをお借りします。
朝倉ノニーの<歌物語> | 僕の好みの人Ma préférence
ジュリアン・クレールはメディアにもよく出て来られている印象があります。
7.Nino Ferrer ニノ・フェレ (1934-1998)
Le sud : 「南」と題した1975年の曲。南国の景色を思い起こさせる歌詞がシンプルながら素晴らしいです。
ラジオのノスタルジーの記事によると、この曲で歌われている「南」というのは出身地のイタリアのことではなく、ニューカレドニア (Nouvelle-Calédonie)で過ごした5年間が曲を書くインスピレーションとなったそう。
L'histoire d'une chanson : Le sud - Nino Ferrer (1975) - Nostalgie.fr
1998年、悲しいことに、母親が亡くなって2ヶ月後、彼はピストル自殺をしてしまいました。この曲にも、どことなく悲しげな空気が感じられます。
8.Serge Reggiani セルジュ・レジアニ (1922-2004)
レジアニの曲は、渋い声が魅力です。
Et puis : 俳優としても活躍したレジアニ、「それから、」と愛の歌を歌っている姿を見ると、まるで芝居を見ているかのような気持ちになります。表情一つひとつにも心が揺さぶられます。
Le déserteur(脱走兵):
この曲は反戦の曲で、レジアニのものはカバーですが、非常に心にきます。
冒頭に語られているのは、アルチュール・ランボーのLe Dormeur du Val(谷間に眠る人)という戦死者のことをうたった詩です。
和訳はランボーの詩を翻訳されている、門司邦雄さんのサイトで見られます。
谷間に眠る人:ランボー 初期詩編 / Le Dormeur du Val : Rimbaud - Poésies
曲の和訳は朝倉さんが書いておられます。