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フランス生活で見聞きしたこと、感じたことを書いていきます

カタールW杯が問題視される理由

サッカーワールドカップがカタールで開催されるようになった経緯について、クリーンでないと騒がれてきましたが、「Franc Tireur」紙でまとめられていたので、紹介したいと思います(文字ばかりで読みにくいかもしれません)。

カタールはフランスで言うとパリのあるイル・ド・フランスのサイズ、日本で言うと秋田県くらいのサイズです。日陰で45℃を超えることもありスポーツには適さない気候(エアコン必須)ということもあり、もともとサッカーが盛んな国ではありませんでした。

©️ universalis.fr

©️ universalis.fr

1995年、ワールドユース(20歳以下の世界選手権)がナイジェリアで開催予定でしたが、同国での髄膜炎の流行により、カタールのドーハにて開催されることになりました。そのすぐ後にカタール首長になったHamad bin Khalifaは、翌年多額の資金を投入し、テレビ局アルジャジーラを設立しました。同テレビ局は2001年の9.11を機に世に知られるようになり、アルジャジーラスポーツ(現BeIn Sport)として、特にサッカーの放送権を手にするようになります。

でもまだこの頃はカタールがW杯の開催国になるということは現実的ではありませんでした。また、当時FIFA会長だったSepp Blatterや欧州サッカー連盟(UEFA)会長だったMichel Platiniはアメリカでのサッカー普及に力を入れており、中東での開催に至るには一筋縄ではいきません。FIFA評議会は複数の大陸から参加する22の国がメンバーとなっており、カタールでの開催を勝ち取るには過半数の票が必要でした。

そんな中、Mohammed Bin Hammamというカタールの富豪が動きます。まず、FIFA評議会に参加しているアフリカの3国(カメルーン、コードジヴォワール、エジプト)を説得する必要がありました。彼は2010年1月にはアフリカサッカー連盟(CAF)の評議会を持つアンゴラにカタール代表団を送り、アフリカ大陸からカタールのみが立候補できるように取り計らいました。CAFは見返りに150万ドルを受け取りました。

次に、南アメリカ大陸の3国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ)から票を得るための根回しです。2010年5月にブラジルのルーラ大統領が都合よくドーハに招待されました。8月にはカタール首長自ら、非公式でブラジルとパラグアイを訪問します。その3ヶ月後、開催国の投票を目前に控え、突如ブラジルとアルゼンチンの親善試合がカタールの資金援助で開催されました。700万ユーロもの資金が2国の連盟に渡ったとされています。

アフリカ、南アメリカの票を獲得しても、まだ過半数には届きません。アジア大陸、北アメリカ大陸の票は、日本、韓国、アメリカといった立候補国に自然と向かうため、次に狙うのは、9票を抱えるヨーロッパです。

2010年の春、カタールはFIFAのスペイン理事Angel Mariaと親密な、レアル・マドリッドの会長Florentino Pérezとの会合を行います。偶然にも?Florentino Pérezの建設グループがカタールにて23億ユーロもの契約を結びました。

夏には、同じくFIFA理事でキプロスのビジネスマンMarios Lefkaritisが南アフリカ大会の際に急遽カタールからの使節との会合を理由に自国に帰国しました。カタールが豊富に保有している液化ガスの契約に関する会合だったと報じられています。

投票を9日後に控えた11月23日には、エリゼ宮にてフランスのサルコジ大統領によってある昼食が開催されます。参加したのはUEFA会長のMichel Platini、カタール首長の息子Tamin(現在の首長)、カタール首相Hamad bin Jassem Al Thani(サルコジと個人的に親密)、当時PSG(パリ・サンジェルマン)を所有していたColony Capital社のSébastien Bazin。

そして2010年12月2日にチューリッヒで開かれたFIFA評議会にて、2018年にロシア、2022年にカタールでW杯が開催されることが決定されます

上記の昼食会からひと月後、カタールはフランスのコングロマリットであるLagardèreグループの株を取得します。Arnaud Lagardèreはこれまたサルコジの友人であり、彼らによってアルジャジーラスポーツは(それまでCanal+が持っていた)フランスのリーグ1の放送権を獲得し、2015年にはヨーロッパチャンピオンリーグの放送権も獲得しました。

また2011年7月には、カタールのQSI (Qatar Sports Investments)がサッカーチームのPSGを買収します。

なおサルコジとカタールとの関係はこれに止まらず、特にカタールはフランスへの武器の輸出を強化しました。

 

今回のW杯開催に当たっては、スタジアム建設にパキスタン人、インド人、スリランカ人など6500人の外国人労働者が奴隷並みの環境で建設作業を行なっていたことが報じられています。また、スタジアムでのエアコン使用によりCO2削減の流れと逆行していることや、LGBTQ支持のメッセージを禁じたことも問題視されています。しかしながら、はっきりと反対の姿勢を示した国はデンマーク以外にありませんでした。

記事の最後に書かれていたことに、W杯最終日である12月18日はカタールの独立を記念した国の祝日だそうです。

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