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フランス生活で見聞きしたこと、感じたことを書いていきます

映画 La conspiration du Caire (Boy From Heaven)

今年のカンヌ映画祭で脚本賞を受賞した「La conspiration du Caire (英題:Boy From Heaven)」を観ました。

©️ memento distribution

あらすじ:漁師の息子であるアダムは、エジプト、カイロにあるイスラム教スンニ派の名門大学「アル=アズハル学院」に入学することになった。家族を置いて地元の村を去り、不安を胸に入学した矢先、大イマームが亡くなる。次第にアダムは次期指導者を巡る宗教と政治の権力闘争の渦中に引き込まれていく・・。

フランスでの予告編はこちら。

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タイトルのla conspirationというのは、「陰謀」という意味です。Co-という接頭辞(「ともに」)があるので、「共謀」というのが合うと思います。le Caireはエジプトの首都カイロのことです(le も含めて)。

英語のタイトルだと「天国から来た少年」(原題の訳も同様)。フランス語の「カイロの共謀」と並べると、だいぶ印象が異なります。鑑賞した後だと、個人的には英語版の方がしっくりくる感じがします。

イスラム教にも天国の観念があるんだと気付かされましたが、イスラム教の死生観についてはよくわかりません。ただ映画でも見られるように、運命は全てアッラーが決める、という教えのもとに物事は進められているようです。権力闘争にその原理が適用されると、どんな手段も正当化され得るという危うさも感じました。組織における権力闘争というのは、大なり小なり、イスラム社会だけでなく色んなところで起こっているわけで、この映画が描きたかったのはより普遍的なものなのかもしれません。

©️ memento distribution

ジャンルはスリラー(ホラーではない)。監督は、中世のカトリック修道院を舞台にしたウンベルト・エーコの著作「薔薇の名前」にインスピレーションを受けたと語っています。ショーン・コネリー主演で映画化もされた作品ですが、まだ読んだことがありません(電子書籍化されるとフランスでも手に入れやすいのですが)。

イスラム教スンニ派の大イマームは、カトリック教会でいうローマ教皇であると考えると、その後継者を選ぶ評議会の重大さが想像されます。

なおバチカンで行われるローマ教皇を選出する評議会はコンクラーベと呼ばれ、Netflixで観られる、アンソニー・ホプキンス主演の「2人のローマ教皇 (Les deux papes)」にも登場しますね。

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©️ Kim Svensson

監督のTarik Salehはスウェーデン人の母親とエジプト人の父親を持ち、この「La conspiration du Caire」の撮影はカイロで行いたかったようですが、2017年の映画「The Nile Hilton Incident」を制作したことで撮影が始まる直前に逮捕状が出てしまい、カイロでの撮影は叶わなかったそうです。実際の撮影はトルコのスレイマニエ・モスク(スレイマン・モスク)で行われました。

下の写真の背景に写っている円状の低めのランプ、スレイマン・モスクの写真を検索すると同じものが見られます。

©️ memento distribution

エジプトを舞台にした映画というと、古代エジプトのものとか、アガサ・クリスティ原作の「ナイル殺人事件」などが思いつきますが、今回の映画のような切り口は新鮮に感じられました。

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