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フランス生活で見聞きしたこと、感じたことを書いていきます

映画 Coup de théâtre (See How They Run)

イギリスが舞台になっている映画を観てきました。

Coup de théâtre ©️20th Century Studios

この映画のフランスでのタイトルはCoup de théâtre (原題:See How They Run)。

舞台は1950年代のロンドン、ウエストエンド地区。ヒットした舞台の映画化計画が進む中、劇場で殺人事件が起こる。事件を担当するストッパード警部(実際は警部補かも)とストーカー巡査がミステリーに巻き込まれていく・・。

予告編はこちらです(フランス語字幕あり)。

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フランス語タイトルのCoup de théâtreというのは、ロベール仏和辞典によると、「どんでん返し」を指す言葉のようです。Coupは一撃とか打撃とかという意味で、「突然感」を表すときによく使われます。芝居の中で急激に状況が変わるというのを示しているのでしょう。クーデタ (Coup d'État)は日本語にもなっていますね。

フランスの歌手ジョルジュ・ブラッサンス (Georges Brassens)の「Les Copains D'abord」という曲にも、coup de Trafalgarというフレーズが出てきます。1805年のトラファルガーの海戦でフランスのナポレオンの艦隊がイギリス軍に全滅させられたことを受け、「大きな失敗」や「予期しない決定打」などの意味で使われるようです。

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Coupを使ったフレーズをもう一つ、un coup de grâce。Une grâceは恩恵とか恩赦といった意味で使いますが、このフレーズはなかなかハードな意味で、「とどめの一撃」を指します。例えば銃殺刑になった者が確実に死ぬように、最後に頭をピストルで撃つ・・という場面を示しています。作家マルグリット・ユルスナール (Marguerite Yourcenar)が Le coup de grâceという小説を書いているのですが、いつか読める日が来るでしょうか。

 

さて、舞台となっているウエストエンド地区というのは、ロンドンの中で劇場がたくさんあるところだそうです。定義によっても指す範囲が異なるそうですが、概ね下の画像の辺りとのこと。偶然にも上記のトラファルガーの海戦の勝利を祝して名付けられたトラファルガー広場がここに含まれていました。

West End地区

原題の「See How They Run」というタイトルは、同じ名前で1944年初演(1945年にはウエストエンドで初演)の劇があることから、そのオマージュかなと思います。ちなみにThree Blind Mice (= 3匹の盲目のネズミ)という童謡の一節から来ているようです。歌詞は「世界の民謡・童謡」サイトに掲載されています。

Three blind Mice 歌詞の意味 マザーグース

もしかしたらこの原題には深い意味が込められているかもしれません。ぜひご覧になった方は考察されてはいかがでしょうか(丸投げですが)。

 

Three Blind Miceの響きとちょっと重なるのですが、主演を務めているアメリカ人のサム・ロックウェル (Sam Rockwell)さん、個人的に大好きな映画「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri (邦題 : スリー・ビルボード)」にも出演されています。どちらの映画でもいい味出してます。

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この作品、すごく面白い考察(大ボリュームです)をされている方がいらっしゃって、ぜひ紹介させていただきたい・・。

『スリー・ビルボード』徹底解説|深読み探偵 岡江 門(おかえもん)|note

 

出演者で印象的だったのは、アメリカ人のエイドリアン・ブロディ (Adrian Brody)です。「戦場のピアニスト」が有名ですが、個人的にはウディ・アレン監督の「ミッドナイト・イン・パリ」のダリ役のイメージが強いです。後者の映画も超有名なのでご覧になったことがある方も多いと思いますが、1920年代のアーティストや作家が次から次へと出てくるので、まだの方は是非。自分ももう一回観たいです。

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もう一人印象深いのはイギリス人のデヴィッド・オイェロウォ (David Oyelowo)。「Selma (邦題 : グローリー 明日への行進)」でキング牧師役を演じた俳優で、かなり多くの作品に出られているようです。今回の映画でもキャラクターが立っていて、よいアクセントになっていました。

Adrian Brody (左)とDavid Oyelowo

さてこのCoup de théâtreですが、映画のスタイルとしてはWhodunit (フーダニット)と呼ばれています。Who('s) done it ? (→ 誰が罪を犯したか ?) から来ている言葉で、視聴者には犯人が分からない状態で映画が進み、探偵と共に推理をしていき、最後に犯人が分かる、というミステリーの描き方を指しています。一般的な推理小説の流れですね。

 

ロンドン警察内の序列で出てきた言葉としては、序列が上の順から

Commissioner : 警視総監→Harold Scott (上司)

Inspector : 警部補→ストッパード警部補

Sergent : 巡査部長

Constable : 巡査→ストーカー巡査

ですが、今の呼称と1950年代の呼称が指すものが同じかは分からないです。

ちなみにCommissioner Harrold Scottで調べると、1940-50年代に実在したロンドン警視総監がいらっしゃるので、そこから名前を取ったのかもしれませんね。

 

推理映画としてはオーソドックスですが、コミカルに進むので、気負わずに観られる映画です。服装や車も昔のものが再現されていて、目にも楽しいです。

 

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